バリアフリーリフォームは、場所に応じて適切な工事をおこなう必要があります。ここでは、場所ごとに主におこなわれる工事の内容と費用相場を紹介します。なお、リフォーム費用は、エリアや工事の範囲、リノベーション前の状態、施工業者などにより異なりますので、あくまで目安として参考にしてください。

◆浴室 
浴室内での事故を防ぐためのバリアフリーリフォームの主な工事の内容と費用の目安は以下のとおりです。

【工事の内容と費用の目安】

・入口の段差の解消:5万円〜10万円
・折り戸・引き戸への変更:12万円〜19万円
・滑りにくい床材への変更:10万円〜20万円
・手すりの設置:2万円〜3万円

浴室では、脱衣所側に水が流れ込むのを防ぐために段差が設けられているのが一般的です。しかし、段差があるとつまずきやすいうえ、水に濡れていることにより滑って転倒する恐れがあるため解消しておきましょう。あわせて浴室の扉を外開きの折り戸、もしくは引き戸にしておくと、万一、浴室内で転倒しても外から扉を開けて救出することができます。

また、水濡れなどにより滑りやすくなる床を、水はけがよく滑りにくい床材に変更しておくと安心です。あわせて手すりも取り付けて、移動時に身体を支えられるようにしておくとよいでしょう。

◆キッチン
安全なIHクッキングヒーター。火を使わないのにとってもパワフル。安全機能も充実していて安心です。
・IHクッキングヒーターへの交換:10万円

◆トイレ
手すりや手洗いを設置すれば、動作に負担が少なくなります。トイレは使用時に、立つ、座る、体を反転させるなどと多くの動作を要します。使用頻度も高いことから、高齢者や体が不自由な方が使いやすいようにリフォームすることが大切です。トイレにおける主なバリアフリーリフォームの種類と費用の目安は、以下のとおりです。

【工事の内容と費用の目安】

・手すりの設置:1万円〜5万円(壁の補強を要する場合は5万円〜10万円)
・引き戸への変更:5万円〜15万円
・和式トイレから洋式トイレへの変更:20万円〜50万円
・トイレスペースの拡張:15万円〜30万円

トイレにおいても、開き戸は不便で転倒の恐れがあるため、扉は引き戸にしましょう。引き戸であれば、車椅子でも楽に出入りできるようになります。あわせてトイレ内での複雑な動作を補助できるように、手すりを設置しておきます。

しゃがんで使う和式トイレは、足腰が弱る高齢者には負担が大きいため、洋式トイレに変更します。スペースを確保できるのであれば、車椅子での利用や介助者が一緒に入ることを想定し、スペースを拡張するリフォームもあわせて検討しましょう。

◆洗面
カウンター下に脚が入れられる仕様にすれば、車椅子の方もラクに使えます。タイルとあしらって、モダンな仕上がりに。

◆廊下
部屋と部屋の段差を解消し、つまずきを防止します。建具を引き戸にすれば、開閉時の動作が楽になります。床材や建具と色の合った手すりは雰囲気も落ち着きます。足元にフットライトを設ければ、夜のトイレも足元が安心です。
廊下は各居室やトイレ、浴室、洗面所間での「移動」が想定された場所であることを踏まえ、以下のようなバリアフリーリフォームを検討します。

【工事の内容と費用の目安】

・手すりの設置:本体価格3,000円〜2万円/m+施工費1万円〜3万円
・段差の解消:2万円〜15万円
・廊下の幅拡張:30万円〜150万円
・手すりの設置で壁の補強を要する場合は追加費用がかかります。
・足元灯の設置:2万円

車椅子での利用を想定し、廊下の幅を拡張する際は、国土交通省の「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」の推奨幅850mm以上にしましょう。あわせて移動中の体を支える手すりの取り付けもしましょう。

各居室との段差については、床をかさ上げする以外にも、市販のスロープを設置するなどDIYで簡易的に解消することも可能です。簡易的なスロープは、幅や素材にもより異なりますが、通信販売で2,000円〜1万円程度で入手できます。

◆玄関
ちょっとした段差も手すりがあるだけで、安心感が変わります。造り付けのベンチを設置すれば、座って靴を脱いだり履いたりできます。
段差が多い玄関では、以下のようなバリアフリーリフォームを検討します。

【工事の内容と費用の目安】

・手すりの設置:壁付き手すり設置:1.5万円〜2万円/床付き手すり設置:3万円〜6万円
・上がりかまちの段差解消:5,000円〜2万円(踏み台設置)
・ドアを引き戸に改修:30万円〜50万円
・玄関スロープの設置:15万円〜20万円
・コンクリートスロープの設置:70万円~80万円

玄関には、エントランスから玄関ポーチ、そして上がりかまちと複数の段差があるのが一般的です。玄関ポーチまでの段差は玄関スロープを、上がりかまちには踏み台を設置します。玄関ドアが開き戸の場合は、車椅子での出入りを想定して引き戸への改修を検討しましょう。玄関ドアの引き戸への改修は、既存のドアとドア枠を解体・撤去して新しいドアを取り付ける「はつり工法」で実施します。

◆寝室
寝室は日中はもちろん、夜間照明を落としたなかで移動することも想定し、リフォーム内容を検討します。具体的な工事内容と費用の目安は、以下のとおりです。

【工事の内容と費用の目安】

・手すりの設置:1.5万円〜2万円
・コンセントの増設:0.5万円〜2万円

コンセントの増設は、移設先が遠い場合や配線が長くなる場合は3万円前後かかることがあります。寝室ではベッドから立ち上がったり、トイレへ移動したりする際に体を支える手すりの設置をおこないます。出入口やベッドの横、ベッドまでの動線など、普段の動きを想定して手すりの位置を決めましょう。

高齢になるとトイレが近くなり、夜間でもトイレに行く頻度が高くなります。暗い中の移動は危険なので、ベッドサイドや足元に照明を設置できるよう、コンセントの増設をおこないましょう。人感センサー式の照明なら、暗い中スイッチを探す必要がないのでおすすめです。

バリアフリーリフォームをおこなうときには、対象者の身体の状況にあわせて工事内容を考えることが大切です。たとえば脚力が衰えているなら手すりの設置、視力が衰えているなら足元の照明など、その人に必要なリフォームは何かを検討します。手すりひとつにしても、ただ取り付ければよいわけではありません。対象者の身長や、身体能力の特性にあわせる必要があります。

また、バリアフリーのリフォームは、高齢者だけでなく、同居する家族にとっても暮らしやすいかという視点で考えることも重要です。たとえば、今早急にバリアフリーのリフォームが必要なわけではなく、将来に備えたいと考えている場合には、工事の内容を限定したほうがよいこともあります。

たとえば子供が小さいうちに大人用の手すりを取り付けてしまうと、子供の頭の高さに手すりが設置されるため、怪我につながる恐れがあります。すぐに必要ではない場合には、リフォームに際してはいったん下地材の設置のみにとどめておくなど、状況に応じて工事の範囲や内容を検討することが大切です。

国や自治体が提供しているさまざまな補助金制度のなかには、バリアフリーリフォームで利用できるものもあります。補助金制度を活用することで、コストを抑えたバリアフリーリフォームの実現が可能です。

自治体の補助金事業

バリアフリーリフォームに関しては、各自治体が高齢者や障がい者向け工事を対象に、補助金制度を設けている場合もあります。たとえば東京都江東区では、介護認定はされていないものの、要支援・要介護状態となる恐れがある高齢者に対する予防給付をおこなっています。手すりの取り付けや段差解消、床材の変更などが助成の対象です。(※2022年6月時点)

各自治体でどのような補助事業を展開しているかは、お住まいの自治体に問い合わせると確認できます。 住宅リフォーム推進協議会の検索システムでも調べられるのでチェックしてみましょう。

◆長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、国土交通省による住宅の性能向上に対するリフォーム工事への補助金制度です。手すりの設置や床段差の解消などのバリアフリーリフォームも、補助対象とされています。

【補助率】
3分の1

【補助限度額】

長期優良住宅(増改築)の認定を取得しないものの、一定の性能の向上が認められる場合:100万円/戸(150万円/戸)
長期優良住宅(増改築)認定を取得した場合:200万円/戸(250万円/戸)
 ※()内の金額は以下の場合に適用されます。

・三世代同居に対応する改修工事を実施する場合
・若者・子育て世帯
・中古住宅の購入者が改修工事を実施する場合
・一次エネルギー消費量を基準比−20%(再エネを除く)とする場合

長期優良住宅化リフォーム推進事業は、既存の戸建て住宅、共同住宅いずれも対象となります。なお補助金を受けるには、リフォーム工事前にインスペクション(専門家による住宅診断)を実施すること、工事後に一定の性能基準を満たすことなど、さまざまな条件があります。制度の利用を検討する際には、補助事業者として登録しているリフォーム業者に相談しましょう。